魔族大公の平穏な日常
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【第四章 大公受難編】
「私の財産と引き替えに、この命はっ……いえ、町はお救いくださると、約束してくださったではないですか!!」
最初に反応したのはガストンさんだ。
お兄さんを見るや、跳ねるように立ち上がって、すぐに椅子の後ろに隠れた。でもお腹がはみ出している。
「おおお、あなた様は! また、会いにきてくださったのですな!!」
逆に両手を前につきだして、お兄さんへと歩みよろうとしたのは領主様だ。気持ち悪い。
「きゃああああ! 私が忘れがたくて、さらいにきたのね!」
赤らむ頬を押さえて立ち上がったのはミナ。その横でマリーナの手が、わきわきと動いている。
「おのれ、魔族……今度はいったい、どんな残酷なことをしに、やってきたのだ!!」
青ざめながら、杖をぎりぎりと握りしめたのは魔術師ブレイスさんだ。
ここは、あたしがこっそり抜け出した役所の会議室。
まだマリーナによる即売会が行われていたその場所に、あたしはお兄さんを案内して戻ってきた。
と、いうのも、お兄さんが――。
「いやあ、どうなってるのかちょっと気になって。ほら、術式はおいて帰ったものの、あの面子じゃやっぱり解くのは無理かな、と思ってね」
なんて、とても気軽で優しい口調であたしに言ったからだ。
この間のどこかピリピリとしたお兄さんと違って、初めて会ったときのような柔和な雰囲気だったもんで、あたしの緊張も緩んでしまい、つい「広場を元に戻してほしい」
とお願いしてしまった。
けれどお兄さんは、簡単に頷いてはくれなかった。困ったような顔をして、「そうしたいのはやまやまだが、そうする理由がみつからない」と言ったのだ。
だからあたしは、ちょうど今、町の偉いオジサンたちがこの間のことを話し合いに集まっているから、そこへ一緒に行ってほしい、とお願いしたのだった。
その結果が、今のこの騒ぎ、というわけ。
けれど、お兄さんは周囲の喧噪なんてどこ吹く風。
「……あれ? なんか、見覚えのあるものが並んでる……」
飄々とした様子で、机の上の品々を見てぽつりとそういった。
マリーナが売り出していた品々が、買い取ったのだろう人の前の机に置かれていたからだ。
マントは領主様の前に、髪の毛と手鏡は魔術師ブレイスさんの前に、竜の爪の垢は道具屋のオジサンの前に、下着は……口にしたくもない。
「この手鏡は」
お兄さんは品物の中から手鏡に目をつけ、そちらに一直線に向かった。
前にいっそう進み出たミナと領主様をのぞいて、その行進を避けるように、他の皆は部屋の端まであとじさる。
口では頑張っていたブレイスさんも、さすがに近くにはよりたくないらしい。というか、一番遠くの端まで逃げている。
「全部集めろといっておいたのに、残っていたのか。それで……」
そう独りごちて、お兄さんは手鏡を懐にしまいこんだ。
それを買ったのだろうブレイスさんが、「あっ」という顔をしてマリーナを見たが、彼女は知らんぷりだ。
それからお兄さんは領主様の立つ奥の方へ歩み寄っていき――領主様、満面の笑みを浮かべた顔が赤らんでる。気持ち悪い――、あたりまえのように上座に腰掛けた。
「よし。じゃあみんな、席につこうか」
こうして、どこか氷を思わす微笑を浮かべる魔族大公と、彼に反対もできないオジサンたちによって、<魔族大公の襲撃事件>についての会議が再開されたのだった。
***
「何をしにきた、魔族めが!!」
さっきはあんなに逃げていたくせに、席に着くなりブレイスさんが杖を振りながら口火を切る。
だけど。
「なんだって?」
お兄さんが無表情にブレイスさんを見た途端、彼は杖をそっと机にたてかけて、背をただした。
愛用の杖が雷で砕かれたことを、思い出したのかもしれない。
「いや、何をしにいらしたのかな……と」
ちなみに、領主様は「マテ」と命じられた犬のように、お兄さんの椅子の横にじっと正座して、キラキラした目でお兄さんをひたすらに見上げている。気持ち悪い。
「何をしにきたのか、か」
お兄さんは居並ぶオジサンたちを見回した。その途端、数人が目をそらし、大多数が緊張の面もちを浮かべたまま、固まってしまう。
「ガストン」
「はひ!」
いきなり名を呼ばれて、ガストンさんが直立不動の姿勢になった。
「手、まだ痛いか?」
「は……いえ、その……はい、ええ、まあ……」
とたんに情けなくなるガストンさん。うん、やっぱりこっちの方がしっくりくる。
「薬草を煎じた薬だ。傷口に塗り込んでおけ」
お兄さんが小さな瓶を、ガストンさんに向かって放り投げた。
「ははあああ。ありがたき幸せ!!」
それをうまくお腹と手で受け取って、ガストンさんは深々と頭を下げる。本人はとても必死だが、それをみる周りのオジサンたちの目がどこか冷たいものを含んでいることに、ガストンさんは気づいているだろうか。
「あああ、私もなんだか胸が痛いわ……誰か親切に薬をくれないかしら」
ミナが声をあげたが、お兄さんどころかオジサンたちからさえ、注目されなかった。
「直接、診察してくれてもいいんだけど!」
声を張り上げるが、反応はなし。憐れ、ミナ。
「ところで、あの広場はまだ氷に閉ざされたままのようだが」
お兄さんの金色の目が、魔術師のおじいさんに向けられる。
恐怖で色が抜けたかのように、おじいさんの顔はその髭とおなじように真っ白だ。
この会議室に入ってから、お兄さんの雰囲気はまたちょっと変わっていた。
私と二人で話していたときはあんなに親しげで優しげだったのに、今はどこか毅然として、近寄りがたい。
そもそも顔だちが整いすぎているんで、笑顔でも浮かんでいないと、とても冷たく見えるのだ。
「俺は解除のための術式を置いていったはずだが」
「くっ……それは……」
ブレイスさんが悔しそうにうめいた。
「ああ、そうか。あれを展開するのが、そもそも無理なのか。人間というのは、それだけ微弱な魔力しか持たないのだったな」
皆の前で力不足を指摘されたブレイスさんは、奥歯をかみしめた。
さっきはあの面子じゃ無理だろう、って言ってたのに。なんでわざわざそんな意地悪な言い方をするんだろう。
「人間だからといって、不可能なわけではない……ただ悔しいが、あれほどの魔術を使えるものが、この町にはいないのだ……」
反論も弱々しい。
「一人で無理なら、複数でやってみたらいいじゃないか」
そう声をあげたのは、お偉いオジサンの一人だ。
「もちろん、それも考えた。だが、この町にいる魔術師全員でかかっても、あの魔法陣を形成することはできないのだ」
「なんだって! そんな話は聞いていないぞ」
偉いオジサンの一人が声をあげ、他のオジサンたちも不安そうに顔を見合わせる。
「準備に時間が必要だ、もう少し待ってくれ、というから我々は……」
「時間が必要なのは本当だ! なぜなら今、魔術師協会に特級魔術師の派遣を要請しているからだ! もう少し……いま少し、時間をくれ」
ブレイスさんは声を絞り出すようにそういった。
「それで、魔族の大公殿。つまりあなたは、我々の無力さを実際にその目で確かめ、人間たちの動揺を誘って、冷笑するためにやってこられたのか」
不穏な空気に満ちた中で、冷静な声をあげたのは町長ボディガさんだ。
「いいや、まさか。俺だってそれほど、暇ではない」
「では何をしに、いらした」
緊張はしてるけれど、怯えた態度をみせない町長さんをどう思ったのか、お兄さんは薄く笑みを浮かべた。
「答える義理はないが、魔族を恐れぬその度胸に免じて聞かせよう」
相手が偉いオジサンたちだからだろうか。お兄さんも、私と話すときと違って、言葉も態度も固い。それにとても偉そうだ。
まあ、あんな立派なお城に住んでいるんだから、本当に偉いんだろうけど。
「さっきの手鏡……あれの回収が、その目的の一つだ。我が妹の魔力が、未だ減少前の水準に戻らぬ。それで回収し損ねた手鏡があるのではないかと考え、調査にきたというわけだ」
あれ? さっきはそんなこと、一言もいっていなかった……。
「他に隠し持った鏡はあるまいな? 出すなら、今のうちだぞ」
オジサンたちが青ざめた顔を見合わせている。
「マリーナ。どうだ?」
「いえ! 持ってません!」
「マリーナ?」
お兄さんはマリーナの顔と、机の上の品々を見比べた。
「ああ、なるほど……」
苦笑が浮かぶ。
「この品々は、返してもらうことにしよう」
そういって、お兄さんは手を閃かした。
その瞬間、小さな魔法陣みたいなものが空中に浮かんだとみるや、机の上の品は一つ残らず消え去ってしまった。
どこかへ移動した、というより、この世から消滅した、という感じだ。
商品を買ったらしいオジサンたちは、それぞれに複雑そうな顔をしたが、中でも領主様の落胆ぶりといったら……気持ち悪い。
「さて、もう一つの目的だが、単なる下見だ」
「下見? 一体なんの……まさか」
「町を襲う下見に……」
オジサンたちの間に動揺が走る。
「まさか。人間の町を滅ぼすくらい、下位の魔族であっても一瞬で足りる。わざわざ大公が足を運ぶ必要などない」
お兄さんは冷笑を浮かべてそういった。それだけで、部屋の温度が冷えきったような顔を、オジサンたちはしている。
でもなんだろう……不思議だけど、あたしはちっとも怖くない。
優しい方のお兄さんを知っているからだろうか。あっちの方が、本性なんじゃないかと思っている。
「お前たちには関係のないことだが」
お兄さんはそう言って、魔族の王の即位を祝う祭りが百日に及んで全土で開かれること、そのために竜が空を飛び交い、恐ろしい魔族たちが列をなして行進すること、を、語った。
「まあ、つまりはその下見……みたいなものだ」
大祭主を押しつけられたからな、と、お兄さんは意味のわからないことをぽつりと呟く。
「……町はもちろん、避けていただけるのだろうな」
魔族に町が蹂躙されるところを想像したのだろう。さすがのボディガさんの声にも、不安が色濃い。
「さてな。道程は行進を取り仕切る者が決めることだ。万が一、パレードが町を避けたとしても、それ以外の魔族の行動まで制限することはできない。まあせいぜい、幸運を祈っているんだな」
突き放すようなその言葉に、全員が声をなくした。
あたしだって、お兄さんは怖くなくても、他の魔族は怖い。
その存在がどれだけ人間にとって残酷で、容赦のないものかは昔話で聞いていたけれど、今は身を以て知っている。
その恐ろしい魔族たちが数百体も列をつくって驀進する、あちこちに出没して騒ぎ出す、と聞いて、恐怖を感じないものはいないだろう。
「さて、どうする? いっそ、町全体を氷で閉ざしてやろうか? この間とは違って、何一つ、誰一人残さず。そうすれば今、お前たちが心配しているような恐怖は、誰も見ないですむわけだが」
つまり今度はあたしも氷像になるということね。
いかにも魔族らしい申し出に、町長さんがひきつった笑みを返した。
「情報を事前にいただけたのは幸いだったが、その申し出は遠慮させていただく。人間は、それほど非力ではない」
そうかしら。結構非力だと思うけど。
「まあ……この世界に魔族以外の者がいることは、俺も気にかけておくことにしよう」
お兄さんはそういうと、おもむろに立ち上がった。
「さて、そのつもりはなかったが、存外に楽しませてもらった。それに免じて、一つ、褒美をやろう」
そのせりふを聞いて、領主様が正座したまま身体を跳ねさせている。こんな色んな話を聞いた後まで、その反応なの?
とことん、気持ち悪い。
お兄さんは食堂の給仕を呼ぶように、軽く手をあげた。
ただ、それだけだ。
さっきみたいに、魔法陣が空中に浮かぶこともない。
けれどそれだけで、部屋の空気が重くなった。
一瞬だけ。
この間、町のほとんどがお兄さんの魔術で解氷されたときは、とても立っていられないほどの重圧と、正体のわからない恐怖でパニックになりかけたものだ。
けれど、今度はたったの一瞬。ズン、と、身体をつきあげる重圧があっただけ。
そうして、終わり。
「残った氷は解いておいた。これで町は元通りだ」
その言葉を、魔術師であるブレイスさんだけは実感として理解したのだろう。
それまで反発心が大部分を占めていた、その瞳。けれど今、お兄さんに向けられている視線には、熱意と憧れに似たものが込められている。
今更ながら、お兄さんの持つ能力に、本当の意味で気づいたのかもしれない。
「元通り? 本当か?」
オジサンの数人が席から立ち上がり、窓に駆け寄って外を見る。
ここから広場を見るのは、間にいくつも建物があるから無理だ。けれど、そうせずにはいられない、という熱を感じた。
「なんだ今の……」
「魔法陣……あんな大きいものが?」
「まさか、また……」
町の外からは、そんなざわめきが聞こえてきた。
どれも不安に満ちた、暗い声だ。
けれど少しして、「おーいおーい」
という明るい叫び声が遠くから聞こえてくるや、状況は一変した。
「みんな来てくれ! 広場の氷が溶けたぞ!」
歓声にも似た叫びに反応して、会議室に座っていた他のみんなも立ち上がり、窓際に駆け寄る。
「おお、なんという」
さっきまでの緊張と不安が吹き飛び、町は安堵と喜びで満ちていた。
話し合いの最中、ずっとお兄さんに熱い視線を送り続けていたミナでさえ、オジサンと手を取り合って目を輝かせている。
そんな歓喜に沸く会議室から、黙って出て行くお兄さんに気づいて、あたしは慌ててその後ろ姿を追った。
「お兄さん!」
「ん?」
役所の出入り口で立ち止まってくれたお兄さんに駆け寄る。
振り返ったその表情には、さっきまでの厳しさはもうない。
「あの、ありがとうございました!」
「ああ。別にいいよ。さっきも言ったけど、俺ももともと、こうするつもりでやってきたわけだしね。理由はまあ……どうだろう。魔族の気まぐれ、ということで、うまく説明つくかな?」
お兄さんは苦笑を浮かべている。
やっぱり一対一でいる時の雰囲気は、どこか優しい。
「あの……お祭りのこと、本当ですか?」
本当に、魔族が町の側までやってくるのだろうか。たくさん、たくさん……。
「ああ、大祭が開かれるのは本当だ。パレードは……まあ、皆の手前、ああは言ったけど、なるべく人間の町を避けるように俺も考えてみるよ。もちろんそうはいっても、うかつに町の外には出ないように」
「はい」
「まあ、万が一……そうだな、浮かれた魔族に出会ってしまったら」
お兄さんは少し考えて懐に手を入れ、ハンカチを取り出した。
派手なバラが、金色の糸で刺繍されたハンカチだ。
「これを見せるといい。俺のものだと相手が理解したら、君は無事でいられるだろう」
「あ、ありがとう……ございます」
あたしはそれを受け取る。
マリーナには、絶対に見つからないようにしないと!
「でも、どうしてこんな……親切に……」
お兄さんはにこりと微笑むと、あたしの頭をぽんぽんと軽くたたいた。
「君の物怖じしないところと、明るい笑顔が気に入ったから、かな」
やばい。惚れてしまいそうだ。
「もっとも、竜はそのハンカチを理解しない。たぶんね。その場合はあきらめてくれ」
なんとも魔族らしい言いぐさに、あたしは苦笑するしかなかった。
そうしてお兄さんは町から去り、あたしは役所から出てきたミナやオジサンたちと一緒に、南の広場の様子を見に行ったのだった。
果たして、広場はちゃんと氷解されていた。マグダブさんやブレイスさん、その他のみんなが以前、無事に氷解されたのと同じように。
そしてやっぱり、記憶は氷漬けになる以前のままで止まっている。
けれどそれがなんだというのだろう。
町はつかの間、お祭りのような騒ぎで満たされた。
魔族の大公がやってきて、襲撃事件とは名付けられたものの、終わってみれば被害は魔術師たちの杖とガストンさんの店の商品だけ。
巨大な魔術に驚きはしたし、そのことに対して恐怖を新たにはしたけれど、それでも今回に限っては犠牲者が一人も出なかったことで、町の人々には魔族を単純に憎悪するより畏怖する心の方が強く根付いたのだ……とは、誰かがだいぶあとになって言った言葉だ。
それにはあたしのもらったハンカチも、一役くらい買っていたのかもしれない。
その後、数十日を経て始まった魔族の大祭は、知らなくても気づかずにはいられないほどの狂瀾を及ぼしたからだ。
お兄さんの言うとおり、空には竜が舞い、普段は見かけない場所でいくらもの魔族をみかけた。
幸運にもパレードが町の側を通ることはなかったが、ふらりとやってきて乱暴を働こうとする魔族が、少しはいたのだ。
あたしはその姿をみつけると、お兄さんからもらったハンカチを魔族に向けた。最初は怖かったけど、町の誰かが魔族の犠牲になるのを見るのは、もう嫌だったからだ。
それに、あたし一人でやったことじゃなかった。
その頃ちょうど、以前ブレイスさんが要請した特級魔術師がこの町に滞在していて、あたしと一緒に行動してくれたりしたことも大きい。
それから、彼と一緒にやってきていた、冒険者たち。
お兄さんの言ったとおり、バラのハンカチは魔族によく効いた。人と変わらない姿の魔族も、動物が混じったような魔族もみんな、それが誰のものかすぐに理解して、大人しく引き返してくれた。見たとたんに悲鳴をあげて、逃げる魔族すらいた。
そうして町は百日にも及ぶその狂瀾を、無事に乗り越えることができたのだった。
まあその間に、特級魔術師や冒険者たちと、あたしやミナの間で、色々すったもんだあったりするのだけど、それはまあいい。
そうしてその後、ハンカチの噂がよその町まで広まったせいで、あたしはいろんな人からそれを譲ってくれと言い寄られることになった。特にマリーナは、何度も何度も懲りずにあたしのところにやってきた。
当然、誰にも譲らなかったけれど。
そう、マリーナといえばちゃっかりしたもので、即売会の品物は消滅したにもかかわらず、約束した代金の半分はきっちり回収したそうだ。なんでも売る契約は成立していたのだし、品物もきっちり譲渡していたのだから、それを守ることができなかったのは本人のせいで売った事実は変わらない、と、いうことらしい。
そのがめつさ……抜け目のなさが気に入ったのか、彼女はガストンさんに見込まれて、彼の店で働くことになったようだ。
その騒ぎからしばらくたち、町が平穏を取り戻した後、お偉いオジサンたちはまた数回に及んで会議を開いたという。
そしてなぜか、<ジャーイル大公閣下に真実の忠誠を誓う町>という方針が決定され、五十人の傭兵たちが全滅した跡に、立派な祭壇がもうけられることになった。それだけでなく、毎年決まった時期になると、そこへ供物がささげられるようになったりしたのだけれど……どうしてそうなったのかは、あたしの知るところではなかったのだった。
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